Scene.7 さらなるステージへ。
高円寺文庫センター物語⑦
この後も、高円寺では何十人もの若者が岡本太郎さんに元気を貰ったでしょう。りえ蔵は、御社への電話から『自分のなかに毒を持て』が、生き永らえたと思っています。
ひとりの書店員が、一冊の本に惚れ込んで一人でも多くの方に読んで貰いたいと思う。そう思わせる本は、そんなに多い訳じゃない。
りえ蔵のひたむきな姿に感じ入ったのは、本を介した人との出逢いにも繋がるんだなぁ~っと!
そうね。出版とはかくも罪深く、また心躍るものでもあるのよね。
そしてボクは言う。
「本屋や出版社の、なに気ないひと言が・・・・ひとに、影響を与えるんだよ・・・・」
「店長、お久しぶり」
「あ、大原さん! どうされていたんですか?!」
「しばらく食べに、あ、旅に行っていたの」
ゲゲゲ、なんか二丁目テイストがアップしているなぁ・・・・。
大原さんって『薔薇族』とか買っていたかな? そっか、高円寺在住の版元さんが言っていたな。
「店長がいる時に、自分の趣味の本は買えないですよ。プライベートばれちゃうもん」
そうよねぇ~本や雑誌の購入って極私的な行為だから、お客さんの私的好みが丸見えでプライバシーノーガード。
なにしろ、雑誌では平積みどころか山積みなのが『薔薇族』『さぶ』『SMスナイパー』だった。
だったら、どうかなぁって海事系出版社の『ロープの結び方』短めロープ付きセットを置いてみたら、売れた売れた!
ならばと、これはどうだってんで医学書系出版社の「聴診器セット」も冗談から駒、これまた売れちゃうんだもん。高円寺は、ノーマルな本屋感覚じゃないのよぉ・・・。
「店長、上の空よ。久しぶりに、おススメ本は?」
「ちょうど読み終わったところですが、文春の『バキュームカーはえらかった!』類書がないだけに、読ませますよ」
「わぉ~文春って、菊ち姦よねぇ~」
ある素敵な出版社の話をせずにいられない。
その出版社に遊びに行ったときに、事務所に溢れる在庫を見て「宝の持ち腐れ」というフレーズが降りてきた。
「これは、お客さんの眼に晒すのが本屋の義務だろう」っと、独り言ちて帰宅した。